スンビュルは自分の失態でヒュッレムを窮地に追いやったため、愛するジェヴヘルを自らの手で殺めなければなりませんでした。
憔悴したスンビュルがヒュッレムに語った壮絶な過去は、ハレムの奴隷宦官の現実を教えてくれました。
オスマン帝国の宦官
宮殿には2種類の宦官がいます。ロクマンのような内廷宦官とスンビュルのような後宮宦官です。
内廷宦官は白人で、皇帝の身の回りの世話をする役をしています。中でも内廷宦官長は重臣が身に付ける黒貂の毛皮を身に付けることを許可されていて、「至福の門の番人」として後宮の出入りを管理し、16世紀までは全内廷の監督をしていました。
一方後宮宦官は、殆どがヌビア生まれの黒人で、エジプト総督から供給されていました。ドラマでは黒人の宦官は出てきていませんが、スンビュルはその生い立ちやアラビア語を解するところからエジプト当たりの出身という設定かもしれません。
宦官の手術は人に対する「去勢」にあたるため、帝都ではなくエジプトで行われていました。イスラムの教えでは人間への去勢は禁止されていますので、汚れ仕事は異教徒の仕事だと思われます。
(ドラマで出てきたコプト教会修道士はそういう位置づけなのでしょう)
※以前何かで、昔の去勢法で手術後水につける話を読んだ気がするのですが、なんだったか思い出せません。思い出したら追記します。
宦官の余生
白人宦官の場合、出世して大宰相になるものもいました。ドラマ出てきたスレイマン・パシャも宦官出身でした。
重臣になれば、宮殿の外に屋敷を持つことができますので、恩給を得て優雅な余生を過ごすこともできました。
黒人宦官の場合は重臣になることはありませんが、16世紀以降は至福の門の番人も黒人宦官が受け持つようになったため、皇帝への影響力が増し、賄賂や付け届けでかなりの財産を築いてようですので、お金には困らなかったでしょう。
宦官と女性
スンビュルはジェヴヘルと逢瀬を重ねていましたが、「去勢」されている宦官が女性とそういう関係を持つことはあったのでしょうか?
去勢されても性欲が亡くなるわけではありません。wikiによると、中国には宦官が「道具を使って」女性と関係を持っていたという記録が残っているようです。
さらに宦官が結婚して養子を迎えて家庭を築くものも多かったようですね。(曹操の祖父も宦官でした)
オスマン帝国にそのようなものがあったのかは分かりませんが、人間の考えることは大体同じですので、あったかもしれません。
スンビュルの語る宦官の悲しい現実は、私たちには到底理解できないですが、それでもたくましく生きるスンビュルたちが幸せに余生を送れることを願います。