今更ですが、「オスマン帝国外伝」の主人公スレイマン1世は、オスマン帝国最盛期の皇帝であり、トルコの国民的英雄です。
史実のスレイマン1世とドラマでのスレイマン
スレイマン1世はセリム1世の息子でオスマン帝国第10代スルタンです。
領土の拡大、法整備などの多くの偉大な業績があり、オスマン帝国を最盛期に導いた偉大な皇帝として、英語では「壮麗帝」(the Magnificent)と呼ばれているので、「オスマン帝国外伝」の原題は「Muhteşem Yüzyıl(the Magnificent Century)」直訳すると「壮麗の世紀」となります。
ドラマでも多くの輝かしい業績が登場していましたが、ロクセラーナ(ロシア女:ヒュッレムのこと)を溺愛したため、晩年はちょっと評価が下がってしまいます。その中でも、最も評判が悪いのが、有能で人気もあったムスタファ皇子の処刑です。
そんなスレイマンは、跡目争いを経験することなく皇帝になりました。
セリム1世が崩御した時、スレイマンの他に後継者と目される皇子がいなかったために、すんなり即位することができましたが、実はセリム1世にはドラマにも名前が挙がった「ユベイス」という隠し子がいました。
ユベイスは、家臣に払い下げ(?)られた側女から生まれた男児です。嫁いだ時すでにセリム1世の子を妊娠していたのですが、母親が他家へ嫁いだ後で生まれたため、皇子とは認められませんでした。しかし、史実においては、セリム1世はユベイスを高官にして自分の側に置いていて、かなり寵愛していた節があります。
ドラマ内でも、スレイマンが即位した時、海軍提督ジャフェルはスレイマンに何かあっても「ユベイス様がいる」と不穏なことを言っていました。
オスマン帝国外伝シーズン1で気になった人物 スレイマンの兄弟ユベイスと海軍提督ジャフェル - オットマニアな主婦のブログ
ドラマで皇太子時代のスレイマンが、父帝から贈られたカフタンで暗殺されそうになったエピソードがありましたが、この暗殺未遂事件で、スレイマンは父帝が自分を暗殺しようとしたことに衝撃を受けました。この件は(ドラマでは)スレイマンの「息子(特にムスタファ皇子)に対する気持ち」に影響しているようです。
セリム1世は、父帝のバヤジット2世を幽閉して帝位についたため、自分もそうなるのではと恐れていたのでスレイマンを亡き者にしようとしたという話ですが、もしかしたら、ドラマ内で出てきた「スレイマン皇太子暗殺未遂事件」は、ユベイスを皇帝に建てようとする筋の犯行だったのかもしれません。
シーズン4でのスレイマン
シーズン3でも垣間見えるスレイマンの老化と、ムスタファ皇子への疑念が、シーズン4ではさらに膨らんでいきます。
父としてのスレイマンと、常に地位を追われる恐怖を抱えている最高権力者としてのスレイマンの苦悩が描かれていくのです。
ムスタファ皇子は、スレイマンから疎まれていることは分かっていても、頑固に自分の正しいと思うことを貫きます。
それはスレイマンが子供だったムスタファ皇子に教えたことなのですが、スレイマンは老化のせいか、年々疑り深くなっていき、ヒュッレムやリュステムの讒言も影響してムスタファ皇子の意見に聞く耳を持たなくなってしまいます。
スレイマンを演じているハリット・エルゲンチェ
ハリット・エルゲンチェは1970年4月30日イスタンブール生まれ。
ミマーシナン大学でミュージカルや舞台演劇を学びました。
オペラやミュージカルで舞台に立つ傍ら、多くのドラマや映画にも出演しています。
↓は「千夜一夜物語」(2006)というドラマ。このドラマで奥様のベルギュザール・コレルと共演。
また、現在はトルコ・スターテレビで放送中のドラマ「Babil 」に主演中。
このドラマではマヒデブラン役のヌル・フェタフォールや、リュステム役のオザン・ギュベンも出演しています。
いかがでしたか?シーズン4ではスレイマンの最晩年が描かれることになりますが、「最高権力者の孤独」が描かれています。
「オスマン帝国外伝」はただスレイマン1世を讃えているだけのドラマではなく、「人間スレイマン1世」が描かれているのです。