現在Netflixで配信されているオリジナル作品、「心の歌」(原題:Gönül)は、遊牧民の間で未だに後を絶たない悲しい「慣習」がテーマの作品ですが、重いテーマを「ラブコメディ」としてシュールに描いています。
軽妙な演者たち
主人公ピロズを演じているのは、「新オスマン帝国外伝 キョセム」でシャーヒン・ギライを演じたエルカン・コルチャク・コステンディル。そしてヒロイン スンビュルを演じているのは、Netflix「ラスト・プロテクター」でゼイネプを演じたハザール・エーギュチルですが、他に「オスマン帝国外伝」でスンビュルを演じたセリム・バイラクタルも出演。いい味を出していますw
特に、「ヒロイン」のスンビュルに「オスマン帝国~」のスンビュルが「スンビュル」って声をかけるシーン、私は思わず「にやり」としてしまいました。
あらすじ
祭りや結婚式で音楽を奏でて成型を立てている遊牧民のピロズ(エルカン・コルチャク・コステンディル)は、演奏のために訪れた結婚式で花嫁スンビュル(ハザール・エーギュチル)に恋をする。しかしスンビュルは・・・。
「古い慣習」のために犠牲になろうとしていたスンビュルをピロズは救えるのか?
今も残る悪しき「慣習」
この作品のテーマとなっているのは、古い慣習による「名誉殺人」です。
イスラム圏では、男女は結婚するまで関係を持つことは、建前上禁止されています。
特に女性が結婚前に戒律を破ってしまった場合、時には「家族の名誉を守るため」として家族の手で制裁をくわえられ、命を奪われてしまうことも少なくないようです。
トルコのような一見世俗的な国ですら、それは決して過去の遺物ではないのです。
↓は今月8日に発覚した家族による「名誉殺人」での家宅捜索の様子。事件そのものは25年ほど前の事の様。
ヒロインのスンビュルが「処女」でないことが発覚、新郎が激怒してスンビュルを実家に戻し、それを「家族の恥」として彼女を一族で亡き者にしようとするのです。
そういう関係を持つことは一人でできるわけではないのですが、スンビュルは若干精神に問題があり、自分と関係を持った相手を覚えていないため、彼女だけが命を奪われそうになるという理不尽さ。実際、地域によってはレイプされた側が家族の名誉のために命を奪われることもあるようです。
このように非常に重いテーマの作品ですが、なぜか妙にあっけらかんとしていて、コメディ調になっています。
現代の私たちの価値観なら、彼らのやっていることは犯罪ですし、実際トルコでも発覚すれば逮捕されるでしょう。
しかし、そういうことをしようとした人たちを糾弾するのではなく、「ただ愛する人を助ける」という物語となっているあたり、根深いものを感じます。